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家系図作成と行政書士|違法になるのか

観賞や記念のために作る家系図について、最高裁判所は平成22年(2010年)12月20日、行政書士法の「事実証明に関する書類」には当たらないと判断し、家系図を作って報酬を受け取った行政書士でない人を無罪にしました。家系図を作ること自体は、行政書士だけに許された仕事ではない、ということです。一方で、家系図のもとになる戸籍の集め方には決まりがあり、行政書士などが使う「職務上請求書」の不正な使用は、たびたび問題になってきました。

行政書士の仕事を定める法律

行政書士法は、行政書士の仕事を次のように定めています(現行の第1条の3第1項。e-Gov法令検索「行政書士法」)。

行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(略)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。

そのうえで第19条は、行政書士(または行政書士法人)でない人が、報酬を得て業としてこの仕事をすることを禁じています。2026年1月1日に施行された改正(令和7年法律第65号。総務省「行政書士制度」)で、第19条には「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という言葉が加わりました。

つまり問題になるのは、家系図がこの「事実証明に関する書類」に当たるかどうかです。最高裁が判断したのは、まさにこの点でした。なお、判決当時の条文番号は「第1条の2第1項」で、いまは「第1条の3第1項」に移っています。

最高裁 平成22年12月20日判決の内容

項目 内容
事件 行政書士でない人が、依頼を受けて家系図を合計6通作り、報酬として合計90万円あまりを受け取った。行政書士法違反で起訴された
一審・二審 家系図は「事実証明に関する書類」に当たるとして有罪(懲役8月、執行猶予2年)
最高裁 一審・二審の判決を取り消し(破棄)、無罪。裁判官全員一致
判例集 最高裁判所刑事判例集64巻8号1291頁

出典:最高裁判所 判決文(PDF)

判決は、依頼した人たちの目的を「自分の先祖について知りたい」「家宝になると思った」「自分の代で家系図を作っておきたい」などと認定し、外に向けて具体的に使う目的を述べた人はいなかったとしました。そのうえで、次のように判断しています。

本件家系図は、(略)個人の観賞ないしは記念のための品として作成されたと認められるものであり、それ以上の対外的な関係で意味のある証明文書として利用されることが予定されていたことをうかがわせる具体的な事情は見当たらない。

そして、依頼者の身分関係を示す書類であることは否定できないとしても、「事実証明に関する書類」に当たるとみることはできない、と結論づけました。

判決を読むときの注意

相続の手続きで役所や金融機関に出す書類は、観賞用の家系図とは目的が違います。相続のための書類との違いは家系図と相続関係説明図の違いにまとめています。

職務上請求とは

戸籍は、本人や直系の家族などが請求できます。これとは別に、行政書士や司法書士などが仕事で必要なときに使える「職務上請求」という仕組みがあります。

日本行政書士会連合会(日行連)は、職務上請求について、行政書士や司法書士などが専用の「戸籍謄本・住民票の写し等職務上請求書」を使い、戸籍法と住民基本台帳法の規定により、職務上必要がある場合に限り使えるもので、限られた資格者だけに認められた制度だと説明しています(日行連 会長談話(平成23年12月19日))。

なお、2024年3月に始まった戸籍の広域交付(近くの役所で戸籍をまとめて取れる制度)は本人などが窓口で請求するもので、職務上請求には使えないと案内している自治体があります(札幌市・岡山市)。

職務上請求書の不正使用が問題になってきた

職務上請求書は、使い方を誤れば他人の戸籍を勝手に取れてしまうため、不正使用がたびたび問題になってきました。

時期 できごと 出典
平成16年(2004年) 不正な職務上請求事件が起き、日行連は平成17年7月に「職務上請求書の適正な使用及び取扱いに関する規則」を施行。請求書を日行連で一元的に作り、1枚ごとに番号をつけるなどの管理を始めた 日行連 会長談話(平成23年)
平成23年(2011年) 偽造した職務上請求書で戸籍謄本などを取ったとして、司法書士らが逮捕された 同上
平成24年(2012年) 偽造した職務上請求書で戸籍謄本などを不正に取ったとして、個人情報の取引を仲介するグループなどが立件され、行政書士らが逮捕された 日行連 会長談話(平成24年10月10日)

最高裁の家系図事件でも、この点に触れられています。宮川裁判官の補足意見は、被告人が手数料を払って行政書士から職務上請求書を手に入れ、戸籍・除籍謄本を請求していたことを「不正行為」とし、その点には問題があると指摘しました。そのうえで、こうした行為は行政書士の自覚と自律で防ぐべきもので、今後は戸籍法133条で処罰されることになるだろう、と述べています。

つまり、家系図を作ること自体は行政書士の独占業務ではないものの、戸籍を集める方法は別の問題として厳しく見られている、ということです。

誰に頼む?選ぶときに確かめたいこと

家系図を手に入れる方法は、大きく分けて次のとおりです。どれが合うかは、予算・かけられる時間・どこまで調べたいかによって変わります。

方法 内容 主な例(公式サイトの記載)
自分で作る 自分で戸籍を集める。直系の先祖の戸籍は広域交付で近くの役所からまとめて請求できる 自分で家系図を作る方法
行政書士が運営する事務所・会社に頼む 行政書士が家系図づくりを看板にしている 家系図職人(梅津行政書士事務所が運営)、家系図作成代行センター(代表が行政書士)
そのほかの代行会社に頼む 会社ごとに、戸籍の収集を担う専門家を案内している 家樹(戸籍の収集は司法書士・行政書士事務所が行うと案内)、Keifu(行政書士報酬を本体価格に含むと表記)

頼む場合は、申し込む前に次の点を各社の案内や問い合わせで確かめておくと安心です。

各社の料金や内容は代行会社の比較と費用の比較にまとめています。

よくある質問

家系図を作るのに資格は要りますか?

自分の家の家系図を自分で作るのに、資格は要りません。人から頼まれて作る場合も、観賞・記念のための家系図について最高裁は行政書士法の「事実証明に関する書類」に当たらないと判断しています。ただし、他人の戸籍を集めるには、戸籍法の決まりを守る必要があります。

行政書士に頼まないと違法になりますか?

観賞・記念のための家系図を、行政書士でない会社や人に頼むこと自体が違法になるわけではありません。判決の内容は上のとおりです。どこに頼むかは、確かめたい点を比べて決めてください。

行政書士なら、家系図のために誰の戸籍でも取れますか?

職務上請求は、職務上必要がある場合に限って使える仕組みです(日行連)。具体的にどのような手続きで戸籍を集めるかは、頼む先に確かめてください。

最終更新:2026-10-27