壬申戸籍とは?閲覧できない理由
壬申戸籍(じんしんこせき)は、明治5年(1872年)に作られた、日本で最初の全国的な戸籍です。身分の呼び名や差別的な記載があったことから、1968年に閲覧が全面的に禁止されました。いまは法務局などで厳重に包んで封印したうえで保管され、誰に対しても見せない扱いです。
本人の子孫でも、研究のためでも、見る方法はありません。家系図づくりで取れるいちばん古い戸籍は、明治19年式の戸籍です。
壬申戸籍とは
壬申戸籍は、明治4年に定められた戸籍法(明治4年太政官布告第170号)にもとづいて作られた戸籍です(参議院 答弁書(令和7年12月26日))。明治5年が干支で「壬申(みずのえさる)」の年だったため、こう呼ばれています。法務省は正式には「明治五年式戸籍」と呼んでいます(1986年5月15日 参議院法務委員会)。
いまの戸籍とは目的が違いました。法務省は2007年の国会で、壬申戸籍は親族の関係だけでなく、税や徴兵などさまざまな行政の目的のために作られ、人口統計や住所登録の性格もあわせ持っていた、と説明しています(2007年3月23日 衆議院法務委員会)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作られた年 | 明治5年(1872年) |
| もとになった法令 | 明治4年の戸籍法(太政官布告第170号) |
| 書かれていたこと | 氏名・生年月日などのほか、華族・士族・平民といった族称(身分の呼び名)、職業、寺、氏神(1986年の答弁) |
| いまの扱い | 誰に対しても閲覧させない。法務局または市町村で厳重に包んで封印し、保管(参議院 答弁書) |
閲覧が禁止された理由と時期
壬申戸籍には、族称の書き方として差別的な呼び名が書かれたものがあり、法務省は「部落差別等、いろんな差別につながること」が書かれているため、もともと公開に適さないと説明しています(1986年5月15日の答弁)。
閲覧が止められたのは1968年です。国会での説明によると、2段階で進みました。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 1968年1月11日 | 法務省民事局長の通達で、一般の閲覧を差し止める。このときは親族には見せる扱いだった |
| 1968年3月 | 親族かどうかにかかわらず、閲覧を全面禁止 |
出典:1968年3月13日 衆議院予算委員会第一分科会(法務大臣の答弁)、1968年3月8日 衆議院法務委員会
親族にまで閲覧を禁じた理由について、法務省は当時、親族が閲覧を求めて窓口で断られると、そこで差別の問題が表に出てしまう危険がある、と説明しています(1968年3月8日の答弁)。
その後、壬申戸籍はすべて保存期間を過ぎて廃棄処分とされ、そのうえで法務局または市町村で厳重に包装・封印して保管されています(2019年5月23日 参議院法務委員会)。2025年12月の政府答弁書でも、「いかなる者に対しても閲覧をさせないこと」とする扱いが示されています(参議院 答弁書)。
壬申戸籍を見る方法はある?
ありません。閲覧は全面禁止で、自分の先祖が載っているかどうかを確かめることもできません。役所や法務局に頼んでも見せてもらえないので、家系図づくりの計画には入れないでください。
先祖をたどるうえで困ることは、思ったより少なくてすみます。明治19年式の戸籍に載っている一番古い人が、江戸時代の終わりごろの生まれということもあるからです(家樹 よくある質問)。
家系図で取れるいちばん古い戸籍は明治19年式
いま取れる最も古い戸籍は、明治19年(1886年)の様式で作られた戸籍です(家樹 よくある質問)。法務省も、明治19年の戸籍法の改正以後の戸籍は、壬申戸籍とは別のものとして市町村に除籍(全員が抜けた古い戸籍)として保存されていると説明しています(1973年3月6日 衆議院予算委員会第一分科会)。
ただし、明治19年式の戸籍も、取れるとは限りません。
- 廃棄されていることがある:除籍の保存期間はいま150年ですが、2010年の改正より前は80年でした。それまでに期限を過ぎたものは廃棄されていることがあります(戸籍で家系図はどこまでさかのぼれる?)
- 焼けていることがある:戦災や災害で戸籍が焼けた地域もあります
- 族称の欄が消されていることがある:明治19年式以降の戸籍にも族称は書かれていて、法務省は族称の欄を墨で消したいという市町村には許可していると答えています(1973年3月6日の答弁)。くわしくは先祖が武士か調べる方法
古い除籍はコンピュータ化されていないことがあり、その場合は近くの役所でまとめて請求できる広域交付では取れません(法務省)。本籍地の市区町村に郵送で請求します(戸籍を郵送で請求する方法)。
古い戸籍の種類は除籍謄本とは・改製原戸籍とはに、読み方は古い戸籍の読み方と用語集にまとめています。
ネットオークションの「壬申戸籍」には手を出さない
壬申戸籍とされるものが、ネットオークションに出品されることがあります。法務省は、出品が分かった場合には、出品者に壬申戸籍の性質を説明して回収に応じてもらうよう求めており、これまでの例では回収に応じてもらっていると国会で答えています(2019年5月23日 参議院法務委員会)。
見かけても、買ったり、写真を広めたりしないでください。自分の先祖を調べる役には立たず、差別に使われるおそれのあるものです。
戸籍より前の先祖を調べるには
明治19年式の戸籍でたどれなくなった先は、戸籍以外の資料を使います。
- お墓と仏壇:墓石や位牌に刻まれた名前と年
- お寺の過去帳:ただし、家系図づくりのための閲覧は原則として断られます(お寺の過去帳で戸籍より前を調べる)
- 郷土の資料:先祖の土地の県史・市町村史に収められた宗門帳や分限帳
手順は先祖の調べ方に、何代前まで分かるかの目安は先祖は何代前までわかる?にまとめています。
本
自分でつくれる200年家系図
橋本雅幸/旬報社(2015年)
戸籍をたどって200年ほどさかのぼる家系図を、自分で作るための本です。
古い戸籍の取り寄せや読み解き、戸籍より前の調査が大変なら、代行会社に頼む方法もあります(代行会社の比較)。
よくある質問
壬申戸籍に自分の先祖が載っているか、確かめてもらえますか?
できません。誰に対しても閲覧させない扱いなので、子孫であっても、中身を見たり確かめたりすることはできません。
明治19年式の戸籍にも族称があるのに、なぜ壬申戸籍だけ見られないのですか?
壬申戸籍には、族称の書き方として差別的な呼び名が書かれたものがあるためです(1986年5月15日の答弁)。法務省は1973年の国会で、明治19年以後の戸籍の族称は士族・平民・華族の3種類で、壬申戸籍で問題になったような呼び名は使われていない、と説明しています(1973年3月6日の答弁)。
明治19年式の戸籍は誰でも取れますか?
取れるのは、その戸籍に載っている人の配偶者や、子・孫などの直系の子孫です。手順は自分で家系図を作る方法をご覧ください。
最終更新:2026-10-28