終活で家系図を残す意味とエンディングノートに書く範囲
終活で家系図を残すいちばんの意味は、自分しか知らない家族の関係と、本籍の移り変わりを次の世代に渡すことです。家系図そのものは相続の手続きに使えませんが、だれが家族で、本籍がどこにあったかが分かっていれば、残された家族の戸籍集めや連絡がずっと楽になります。
まずはエンディングノートの家族のページに、祖父母から孫までを思い出せる範囲で書くところから始めてください。
終活で家系図を残す3つの意味
1. 家族が知らない関係を残せる 前の結婚で生まれた子、養子、若くして亡くなった兄弟など、子どもや孫が知らない関係は珍しくありません。相続人になるのは配偶者と子が基本で、子がいなければ父母などの直系尊属、その次が兄弟姉妹です(民法 第887条〜第890条)。知らない関係があとから分かると、手続きの途中で慌てることになります。
2. 本籍の移り変わりが分かる 相続の手続きでは、亡くなった人の出生から亡くなるまでの戸籍をそろえる場面があります(法務局)。結婚や転籍で本籍が移っていると、請求先の役所がいくつにも分かれます。結婚前の本籍、引っ越しで移した本籍を書いておくだけで、家族は請求先に迷いません。
3. 戸籍に載らない家の記憶を残せる 戸籍に載るのは名前・生年月日・続き柄などの身分の記録です。写真に写っている人の名前、家紋、お墓や菩提寺、親戚づきあいの話は、本人が書かなければ残りません。
相続の戸籍集めとの関係
相続の手続きで法務局や銀行に出す図は、相続関係説明図か法定相続情報一覧図で、記念の家系図とは別物です。違いは家系図と相続関係説明図・法定相続情報一覧図の違いで詳しく説明しています。
法務局の「法定相続情報証明制度」を使うと、戸籍の束と一覧図を出して、認証文の付いた一覧図の写しを無料で受け取れます(法務局「法定相続情報証明制度」について)。法務局の手続きの案内には、次のことが書かれています(法定相続情報証明制度の具体的な手続について)。
| 項目 | 法務局の案内 |
|---|---|
| 申し出られる人 | 亡くなった人の相続人(またはその相続人)。親族や行政書士などに代理を頼むこともできる |
| 申し出る先 | 亡くなった人の死亡時の本籍地、最後の住所地、申出人の住所地、亡くなった人名義の不動産の所在地のいずれかを管轄する登記所 |
| 必ず用意する戸籍 | 亡くなった人の出生から亡くなるまでの戸除籍謄本 など |
| 保存期間 | 一覧図は5年間(申出日の翌年から)保存され、その間は再交付を受けられる |
元気なうちに自分の戸籍を出生までさかのぼって家系図を作っておくと、どの役所に何通あるかの見当がつきます。ただし、亡くなったことが書かれた戸籍は、亡くなった後にあらためて取る必要があります。集めた戸籍は捨てずに、家系図と一緒に保管場所を家族に伝えておきましょう。
子が親の戸籍を集める場合、親は直系なので、近くの役所の窓口でまとめて請求する「広域交付」が使えます(法務省)。相続人が兄弟姉妹になる場合など、広域交付で取れない戸籍については広域交付でできないことを見てください。
エンディングノートに書く範囲
法務局のサイトに載っている長野県のエンディングノートには、「家系図 思い出せる範囲で書いてみましょう!」というページがあります。父方・母方の祖父母、父母、兄弟姉妹、おじ・おば、配偶者と義父母、子と子の配偶者、孫、甥・姪などの欄が並び、自分の欄には本籍を書く欄もあります(長野地方法務局サイト掲載のエンディングノート(PDF))。
これを目安に、優先順位をつけて書くと続けやすくなります。
| 優先度 | 書く人・こと | 理由 |
|---|---|---|
| まず書く | 配偶者、子、孫、自分の父母と兄弟姉妹(亡くなった人も) | 相続や連絡で最初に関わる人たち |
| できれば書く | 自分の今の本籍と、結婚前・転籍前の本籍 | 家族が戸籍を集めるときの手がかりになる |
| できれば書く | 前の結婚、養子縁組、認知など、家族が知らないかもしれない関係 | あとから分かると手続きが止まりやすい |
| 余裕があれば | 祖父母、おじ・おば、いとこ、甥・姪 | 親戚への連絡、家の歴史として |
| 余裕があれば | 家紋、宗派、菩提寺、お墓の場所、先祖の言い伝え | 戸籍には載らない |
同じノートの中で、財産の分け方を指定して法的効力を持たせるのは遺言書だと説明されています(同PDF)。エンディングノートに財産の分け方を書いても、遺言書の代わりにはなりません。遺言書を法務局に預ける制度もあります(法務省「自筆証書遺言書保管制度について」)。
エンディングノートには家族の個人情報が集まります。置き場所は信頼できる家族にだけ伝えておきましょう。
元気なうちに聞いておくこと(親に聞く人へ)
親の終活を手伝う立場なら、次のことを聞いておくと、家系図にも相続の準備にも役立ちます。
- 本籍の移り変わり:生まれたときの本籍、結婚して移した本籍、転籍の有無
- 両親(あなたから見た祖父母)の名前と出身地、母親の旧姓:旧姓は戸籍でも確かめられます(旧姓の調べ方)
- 兄弟姉妹全員の名前:幼くして亡くなった人、養子に出た人も含めて
- 前の結婚や養子縁組の有無:聞きにくければ、戸籍で確かめる方法もあります
- 家紋、宗派、菩提寺、お墓の場所:お寺の過去帳で戸籍より前が分かることもあります(お寺の過去帳で戸籍より前を調べる)
- アルバムの写真に写っている人の名前:これは本人にしか分かりません
戸籍はあとからでも役所で取れますが、写真の人の名前や思い出話は、聞いておかなければ残りません。古いアルバムを一緒に見ながら聞き、写真の裏に名前と年を書いておくのがおすすめです。
家系図をどの形で残すか
| 残し方 | 手間 | 向いている人 |
|---|---|---|
| エンディングノートの家族のページに書く | 少ない | まず関係だけ残したい人 |
| 無料テンプレートに手書きする | 少ない | 先祖を4代までたどりたい人 |
| 戸籍を集めて自分で作る(自分で作る方法) | 多い | 本籍の移り変わりまで正確に残したい人 |
| 代行会社に頼む(代行会社の比較) | 少ない(費用はかかる) | 平日に役所へ行けない人、古い戸籍を読むのが大変な人 |
家系図を作るために集めた戸籍は、読み方が分かれば相続の場面でも見返せます。戸籍の読み方と取り方を1冊で確認したいなら、次の本があります。
本
すぐわかる戸籍の読み方・取り方・調べ方
丸山学/成美堂出版(2012年)
古い戸籍の読み方と取り方に絞った本です。手書きの戸籍を読み解くところでつまずいたときに役立ちます。
家系図を家族への贈り物として形に残すときの考え方は家系図をプレゼントにするときの選び方にまとめました。
最終更新:2026-10-28